「幻創戦艦・大和」についてのご説明
『ファンタシースター』シリーズプロデューサーの酒井です。
2月20日(土)に開催された「ファンタシースター感謝祭2016・大阪」におきまして発表した新レイドボス「幻創戦艦・大和」と新オープニングムービーですが、会場において、大きな拍手と歓声をいただきました。
その後、ネット上で「幻創戦艦・大和」に関しての多くのご意見を頂戴していることを確認しました。
下記に長文ではありますが、「幻創戦艦・大和」を登場させるに至った経緯のご説明と、それに関して頂いたご意見への対応を記させていただきます。
「幻創戦艦・大和」について
『PSO2』に登場する「幻創戦艦・大和」は、幻から創り出されて自らの意志で動く架空の存在となりますので、史実上の「戦艦大和」を破壊する内容ではありません。戦艦大和本体に何かがとりついたものでもありませんし、乗組員も存在しません。
大阪で公開したムービーにおいては、「幻創戦艦・大和」登場のインパクトを出すため、もし戦艦大和を現実に目にしたとしたら、このように見えたのでは、という姿をCGでできるだけ再現することを目標にしました。(もちろん、演出上のフィクションの部分も存在します。)
公開されたムービーの最後の方にある通り、ゲーム中においては、「幻創種」ならではの戦艦大和とは違う攻撃を多々行ってきます。ミサイルランチャーを出したり、空中を浮遊して、海に潜ったり、船体から巨大なレーザー砲を出して撃ったりといった攻撃を行う、「幻創戦艦・大和」というまったく新たな姿をゲームではプレイして頂きたいと思います。
※『幻創種』とは
『PSO2』の地球「東京」フィールドにおいて登場するエネミー種別の総称で、人の恐れや想像を大気中に存在する「エーテル」という粒子が具現化させたもの。戦車や戦闘ヘリ、恐竜やゾンビなどが存在するが、そのものの形を模しただけの別物であり、その攻撃は、戦車がミサイルを出したり、恐竜が腹からレーザーを出したりと、常識や物理法則を無視した攻撃をしてくるのが特徴。
菊花紋章について
菊花紋章については、これまでも数多くのプラモデルや映画など、多くの作品で登場した大和でも再現されています。
弊社法務機能においても使用には知的財産上、法務上の問題はないことの確認を行っております。
今回の「幻創戦艦・大和」の菊花紋章は戦艦大和に搭載されているものとは細部が異なります。
菊花紋章は戦艦大和のデザイン上においても重要な部分です。「幻創戦艦・大和」を登場させる際に、その重要性を尊重し、変更をなるべく抑えることで進めておりました。
なお、ゲーム内において、菊花紋章部分の部位破壊ができるという仕様はございません。
「幻創戦艦・大和」を敵として登場させることについて
「幻創種」と言うのは人の恐れや想像にエーテルが反応して具現化したものです。
『PSO2』において「地球」を舞台にし、「東京」を登場させると決めた際に、レイドボスを何にするか、という議論がありました。
その中では歴史上の人物や巨大な建造物など、いろいろな意見がありましたが、酒井には日本人にとって時を超えて大きな存在である「戦艦大和」の姿を借りた「幻創戦艦・大和」以外には考えられませんでした。
アクションゲームにおいて、敵キャラクター=エネミーはすべてのプレイヤーが接する存在であります。
その中でも12人で倒す緊急クエスト用のレイドボスというのは『PSO2』においてはエネミーの中でもより大きな扱いとなる、普通のゲームであれば、「ラスボス」のようなものです。
「恐れや想像を具現化する」幻創種の集大成として、現在においても多くの人の憧れや畏怖の象徴であり、強大な力をもつ「幻創戦艦・大和」は適役と思います。
男の子は「強いものと戦いたい」と思うのは共通心理ではないでしょうか?
最強の戦艦と戦うのは夢の一つでしょうし、さらに「A.I.S」というロボットに乗って空中戦を繰り広げるなんて、真面目な歴史ゲームや、ファンタジーゲームにはできないことで、なんでもありのSFゲームの世界でしか、『PSO2』でしかできないことです。だからこそ、「幻創戦艦・大和」を登場させたい、と思ったのです。
一方、まったく新たな姿とはいえ、「大和」という名称を含む敵と戦うことに対して抵抗感があるというご意見も頂戴しております。
上にも書いていますとおり、ゲーム中に登場する「幻創戦艦・大和」も零戦も乗組員は存在しませんし、ガワだけを模したいわばレプリカや巨大な模型に近いものです。攻撃も常識では考えられないものですし、別の新たな物、という認識で開発をしております。
ゲームは幅広いエンターテイメントです。戦争についての問題や、歴史の重さを受け止めつつ、今回のエネミー化をエンターテイメントにおける表現の一つとして許容いただければ幸いです。
今後の対応について
ここまで登場させるに至った経緯を書いてきましたが、「大和と名のつく戦艦を敵として登場させること」「菊花紋章のままの戦艦に攻撃を加えること」について多くのご意見をいただきました。これまでの説明で私たちの想いにご理解をいただけた方もいらっしゃるかもしれません。
これまで、「戦艦大和への敬意を大切にして、新たな幻創戦艦・大和の姿を描きたい」という思いで準備を進めてきましたが、菊花紋章があることで心情的部分にご納得いただけない方への配慮が足りなかった点について反省しています。
最終的に、ご意見をいただいた皆さんのお言葉を真摯に受け止め、ゲームをよりたくさんの方に楽しく遊んでいただくため、オープニングムービー、パッケージ、ゲーム内共に登場する「幻創戦艦・大和」についている「菊花紋章をまったく別のデザインに変更する」ことといたしました。
ゲームの中だけの、戦艦大和とは異なる、新たな「幻創戦艦・大和」としてご理解いただきたいと考えます。
下記に修正後のオープニングムービーのカットを掲載いたします。
酒井自身の「大和」への想いについて
大阪での感謝祭の生放送で無駄に熱く語ってしまった通り、酒井は本当に「大和」が大好きです。
酒井自身が、初めて大和に触れたのは「宇宙戦艦」の方だったかと思います。
当時我が家に一緒に住んでいた叔父が「ウォーターラインシリーズ」という軍艦プラモデルを数十隻作っており、叔父が家を出た後、これを引き継いで毎週のようにプラモ屋さんに行っては、軍艦プラモを買って作る毎日でした。
中でも大好きだったのは「戦艦大和」でした。
大和の他の軍艦とは一線を画すその機能的で美しい構造物とデザイン。
大鑑巨砲主義の最中、日本軍の希望として作られたのにもかかわらず、満足な働きをすることなく、沖縄への水上特攻により、その巨体を海中に没することとなった悲劇の戦艦。
しかしなにより、巨大で子ども心にも本当にかっこ良いその姿は、今昔を問わず男の子にとっての永遠の憧れではないでしょうか?
小学生のころから、大小の大和のプラモデルを作ったり軍艦に関する本を読み漁り、小学生時代の愛読書は「戦艦武蔵のさいご」という本でした。
小学校のお楽しみ会では大和の紙芝居を作ったこともありました。
大人になるにつれて趣味は別のものに移りましたが、大和への想いは消えてはいませんでした。
初めてセガに入った時に担当したソフトは「ワールドアドバンスド大戦略」。第二次大戦を題材にしたシミュレーションゲームでした。
大戦略シリーズとしては初めて、ユニットを3D化して戦闘シーンを描くということで、酒井は主に大日本帝国海軍の艦船をモデリングしていました。
もちろんその中には大和もあり、嬉々としてそのモデリングを行ったものでした。
大和は戦時中機密扱いだったこともあり、正確な資料が現在においても存在していません。
そして大和は竣工以来、改装によって何度かその姿を変化させています。
皆さんをワクワクさせる夢の対決を実現するべく、自分のこれまで得た知識を総動員して、「幻創戦艦・大和」のモデルについては監修いたしました。
レイドボスというのは『PSO2』において、プレイヤーと並ぶ主役級の扱いといえます。
強大な敵だからこそ、みんながカッコいいと思うものだからこそ、倒し甲斐があるものですし、それだけの「愛」を今回の「幻創戦艦・大和」に込めました。
我々の説明が足りなかったために、多くの議論を招いてしまいましたことをお詫び申し上げます。
以上が今回の問題についての酒井からのご説明となります。
長文を読んでいただきありがとうございました。
プレイヤーの皆さんは、5月の実装について、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
これからも『PSO2』は、『PSO2』にしかできないオンリーワンのコンテンツを作ってまいりますので、どうぞご期待ください。